A.R
財務部 部長
ブラジルの製造拠点・Bozel Brasilでは、「持続可能なフェロアロイづくり」を実現するための大きな変革が進められていました。
再生可能エネルギーによる安定した電力供給、再生可能原料を使ったフェロアロイ製造、そして環境負荷の少ない生産設備の整備。この3つの取り組みは、JMCグループが掲げる「産業と地球環境の共存」を具現化するものです。

A.R
財務部 部長

L.P
購買部 部長

T.F
製造部 チーフエンジニア
フェロアロイ製造において、電力は生産の根幹を支える要素です。Bozel Brasilでは、従来の水力発電に加えて16MW規模の太陽光発電を導入し、再生可能エネルギー100%による電力供給体制を確立しました。
気候変動による水量変動リスクを補完し、事業継続性を高めるこのプロジェクトの中心には、電力と財務の両面から安定性を追求したメンバーたちの尽力がありました。
A.R
当初、この計画を聞いたときは、資金を投じずに太陽光発電所を持つという構想が本当に成り立つのか、半信半疑でした。しかし、私たちは“理想を実現する方法”ではなく、“実現可能な理想”を設計しようと決めたんです。
まず取り組んだのは、経済合理性の確保です。
環境対応であっても、コストを上げては事業として持続できません。
従来の水力発電とのコスト比較を詳細に行い、発電量の季節変動や契約リスクを分析。その上で、
パートナー企業と協働し、発電・運用・リースを一体化した新しい契約スキームを構築しました。
この仕組みにより、Bozel Brasilは自社で設備投資を行わずに、長期的かつ安定的な電力供給を確保することができたのです。
また、技術的な観点からも慎重な検討が必要でした。
太陽光発電は発電量が天候に左右されやすく、製錬プロセスのように電力消費が連続する生産ラインには不安定な側面があります。
そこで、既存の水力発電とのバランスを最適化し、発電量の時間変動を平準化させる運用ルールを設定しました。
このプロジェクトを通して感じたのは、“エネルギーの安定は、単なるコスト問題ではなく、事業そのものの信頼性を支える要素”だということです。
再生可能エネルギーは環境対応であると同時に、事業継続性を強化する戦略的な選択肢でもあります。
今では、この太陽光発電がBozel Brasil全体の製造を支える確かな土台となっています。
Bozel Brasilが次に取り組んだのは、原料の見直しでした。
従来の化石燃料(コークス)を、植林木由来のユーカリ木炭へと置き換え、再生可能原料による製造プロセスを確立する――。それは、“フェロアロイづくりの根幹”を変える挑戦でもありました。
L.P
フェロアロイ製造における還元剤(主原料を還元反応させる副原料のひとつ)は、従来コークスが主流でした。それを木炭に置き換えるというのは、技術的にも供給面でも非常に大きなハードルがありました。
木炭は天然素材由来のため性質が一定ではありません。一方、密度・粒度・含水率などが反応に影響を与えます。1つのロットでも条件が違えば反応熱が変化し、最終製品の品質に影響を与えることもあります。
そこで私たちは、まず“品質のばらつきを許容しないための調達体制”を再構築しました。
森林認証を受けたサプライヤーのみに限定して契約を締結し、調達経路のトレーサビリティを明確化。現地の監査チームと連携し、伐採・生産・輸送までを一貫して可視化する仕組みをつくりました。
さらに、木炭の特性を数値化するために研究機関と共同研究を実施しました。密度や灰分、揮発成分などの化学的指標を体系的に測定し、最適な混合条件をシミュレーション。これにより、木炭でも従来のコークスと同等の還元力を発揮できることを実証しました。
環境面では、CO₂排出量の削減効果が特に顕著でした。
化石燃料を使う場合と比べて最大60%の削減が可能となり、副生成物も大幅に減少。“再生可能原料でつくるフェロアロイ”が、技術的にも経済的にも成立することを証明できたと感じています。
この挑戦は、単なる原料置き換えではありません。それは、“フェロアロイをつくるプロセスそのものを再定義する”試みでした。私たちは今、環境に配慮した製造を“選択”ではなく“基準”に変える段階に立っています。
電力、原料と続く改革の最後の柱は、環境対応型の生産設備の導入でした。Bozel Brasilでは、炉の排出ガス処理システムを刷新し、粉じんや粒子状物質の排出を大幅に削減。
クリーンで安全な操業体制を整えることで、環境基準を超える品質管理を実現しました。
T.F
今回の設備刷新で最も難しかったのは、“生産を止めずに工場を進化させる”という点でした。
フェロアロイ製造の電気炉は常に高温で稼働しており、長時間の停止は許されません。そのため、既存ラインの稼働を維持しながら、新システムを段階的に導入する工程設計を行いました。
設計段階では、エンジニアリング・財務・法務・安全管理など多部門が密接に連携しました。特に粉じん対策の設計では、複数の集じん方式を比較し、メンテナンス性と捕集効率の両立を追求しました。
結果として、排出される粒子状物質を従来比で半分以下に抑えることができました。
導入後は、設備の運用データをリアルタイムでモニタリングし、フィルター交換の最適タイミングをAIで自動判定するシステムも開発しました。これにより、稼働率を下げることなく環境性能を安定的に維持できるようになりました。
このプロジェクトを通じて、“環境対応はコストではなく価値”という考え方が社内に根づきました。クリーンな操業は、地域社会からの信頼を高め、社員が自信を持って働ける環境をつくります。
私たちは、環境基準を“守るための目標”ではなく、“自ら高めていく指標”として捉えています。
再生可能エネルギーで「動かす」。
再生可能原料で「つくる」。
環境技術で「守る」。
この3つの柱が組み合わさり、Bozel Brasilは「100%グリーンフェロアロイ」という新たな製造モデルを実現しました。
それは、環境と事業を両立させる、持続可能なフェロアロイづくりのあり方を示す挑戦です。
経済性・環境性・社会性を高い次元で両立させたこの取り組みは、私たちが掲げる「持続可能な社会の創造」を具現化した象徴的なプロジェクトとなりました。Bozel Brasilの挑戦は、これからも進化を続けていきます。
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